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写意画・無根樹100首-第26首#491

写意画・無根樹100首-第26首#491– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

 無根樹の詩には、天地との調和、陰陽の循環、無限の可能性を秘めた「根源的な力」が表現されています。
 この絵は、中国の武当山に代々伝統的に伝わってきた、符図として観念を写意した写意画で、行気(ぎょうき=気の流れ)によって、観念化された意が画面に宿る技法にて描きます。
座る人物が符図を掲げ、気の流れとともに描かれた写意画。道(タオ)の世界を象徴する霊的な図像が、観る者の心に響き、天地との調和と精神的な静けさをもたらす。 道(タオ)の世界には、「符図(ふず)」と呼ばれる霊的・象徴的な図像があります。
 これは一種の呪符でありながらも、単なる宗教道具にとどまらず、写意的に描かれた霊的絵画で、観る者の精神面に直接働きかける精神感応的な美術としての力を持っています。
 そのため、古来より多くの人々が、不老長寿、健康、吉祥、家庭の調和などを願い、こうした道家的写意画や符図を自宅や書斎、寝室に飾ってきたのです。絵を見ることは、単に美を愛でるのではなく、生活に「道」の気配を招き入れ、心身を調律するための行いとされていました。
 このように写意画は、単なる絵画表現にとどまらず、人の精神・生活・宇宙との調和を媒介する芸術です。
 この写意画は、「目で見るもの」ではなく「心で感じるもの」です。
 それは道(タオ)と通じ、自然の気と共鳴し、観る者の内面を静かに動かす力を持ちます。
 符図や写意画は、古より今に至るまで、”人の魂に語りかける「霊なる絵」”として息づいているのです。
 下記にこの写意画の意となる「哲理詩」無根樹の原文と、現代日本語訳とその解釈を添えておきましたので、是非お読みください。
 ※無根樹の作者「張三丰(1247年〜?)」は、太極拳を確立した人物としても有名で、太極拳にもこの無根樹を適用しました。補足として、武当山に伝わってきた太極拳との関連解釈も記載しておきました。

無根樹・第26首

写意画・無根樹100首-第26首#491– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

原文

無根樹,花正靜,無風自起獨自行。不依不倚無人識,獨領風騷光自生。

現代日本語

根のない木に、花は静かに咲く。風も吹かぬのに自ら動き、ひとり進んでゆく。誰にも頼らず、誰にも知られず、ただ独りで風雅を極め、内から輝きを放つ。

解釈

この詩は、依存しない精神と、内面から湧き出る独立した輝きを表しています。【1】無根樹,花正靜(むこんじゅ はなまさにしずかなり)根のない木に、花が静かに咲くという描写は、「外部に頼らぬ強さ」と「動揺しない自立」を象徴しています。静かであるがゆえに、内に確かな力を蓄えている様子です。【2】無風自起獨自行(かぜなくしておのずからおこり ひとりゆく)風の助けもなく自ら起ち上がり、道を行く姿は、「無為」と「自律性」の象徴です。環境や人に依存せず、自らの内にある無為自然の道を歩むことの尊さが込められています。【3】不依不倚無人識(よりかからず かたむかず ひとしることなし)何者にも寄りかからず、何事にも傾かずに存在することは、真の独立した在り方です。それゆえに人目には触れにくく、理解されづらい孤高さを帯びています。【4】獨領風騷光自生(どくりょうふうそう ひかりおのずからしょうず)独りで風雅を導くことができるのは、内に光があるからこそ。他人の評価を超えた、内的完成から生まれる美しさと影響力を表現しています。

太極拳との関連解釈

この詩は、太極拳における「独立した氣と意」「内発的な力」の体現を語ります。【1】無根樹,花正靜:静中の力外的な派手さを求めず、静かな姿勢の中に力を蓄える修練者の態度。姿は静かであっても、内部には深い氣の流れがあります。【2】無風自起獨自行:無からの発動外界からの刺激に反応するのではなく、内側の氣に従って自然に動く。太極拳の理想は「無為自然」の動きであり、自らの氣で動くことです。【3】不依不倚無人識:独立した身体状態他人の模倣や支持を必要とせず、自らの中心軸(中正)を信じる。それは目立つものではありませんが、本質的な力を宿しています。【4】獨領風騷光自生:完成された内功太極拳の極意は、外見の派手さではなく、内側からにじみ出る光のような氣にあります。自らの力で世界を変えるのではなく、調和の中に自然と光を放つ存在となるのです。

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