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写意画・無根樹100首-第43首#319

写意画・無根樹100首-第43首#453– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

 無根樹の詩には、天地との調和、陰陽の循環、無限の可能性を秘めた「根源的な力」が表現されています。
 この絵は、中国の武当山に代々伝統的に伝わってきた、符図として観念を写意した写意画で、行気(ぎょうき=気の流れ)によって、観念化された意が画面に宿る技法にて描きます。
座る人物が符図を掲げ、気の流れとともに描かれた写意画。道(タオ)の世界を象徴する霊的な図像が、観る者の心に響き、天地との調和と精神的な静けさをもたらす。 道(タオ)の世界には、「符図(ふず)」と呼ばれる霊的・象徴的な図像があります。
 これは一種の呪符でありながらも、単なる宗教道具にとどまらず、写意的に描かれた霊的絵画で、観る者の精神面に直接働きかける精神感応的な美術としての力を持っています。
 そのため、古来より多くの人々が、不老長寿、健康、吉祥、家庭の調和などを願い、こうした道家的写意画や符図を自宅や書斎、寝室に飾ってきたのです。絵を見ることは、単に美を愛でるのではなく、生活に「道」の気配を招き入れ、心身を調律するための行いとされていました。
 このように写意画は、単なる絵画表現にとどまらず、人の精神・生活・宇宙との調和を媒介する芸術です。
 この写意画は、「目で見るもの」ではなく「心で感じるもの」です。
 それは道(タオ)と通じ、自然の気と共鳴し、観る者の内面を静かに動かす力を持ちます。
 符図や写意画は、古より今に至るまで、”人の魂に語りかける「霊なる絵」”として息づいているのです。
 下記にこの写意画の意となる「哲理詩」無根樹の原文と、現代日本語訳とその解釈を添えておきましたので、是非お読みください。
 ※無根樹の作者「張三丰(1247年〜?)」は、太極拳を確立した人物としても有名で、太極拳にもこの無根樹を適用しました。補足として、武当山に伝わってきた太極拳との関連解釈も記載しておきました。

無根樹・第43首

写意画・無根樹100首-第43首#453– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

原文

無根樹,花正紅,心隨天命,順氣自來。陰陽相助,氣運如風,無求無欲,自然是道。

現代日本語

根のない木に、紅い花が咲く。心は天の定めに従い、気は自然に調和して巡る。陰と陽は互いに助け合い、気の流れは風のように自由である。求めず、欲せず、そこにこそ自然の道がある。

解釈

この詩は、「運命に委ねた心の在り方」「陰陽の調和」「自然な気の流れ」「無欲こそが道」という無為自然の哲理を語っています。【1】無根樹,花正紅(むこんじゅ はなまさにあかなり) 紅い花は生命力と情熱の象徴。不安定な中にあっても、その情熱は燃え上がり、存在の確かさを放ちます。【2】心隨天命,順氣自來(こころはてんめいにしたがい きにしたがえばおのずからきたる) 心を天命に委ねることで、気は自然に整い、努力せずとも必要なものが巡ってくる。これは「道に従う」姿勢の核心です。【3】陰陽相助,氣運如風(いんようあいじょし きうんはかぜのごとし) 陰陽のバランスが取れていれば、気は障害なく風のように流れる。【4】無求無欲,自然是道(もとめず ほっせず しぜんこそがみち) 欲を離れ、求めることをやめたとき、自然に即した「道」が現れる。これは老子の教える「無為自然」の境地を表しています。

太極拳との関連解釈

第43首は、太極拳修養における「無為」「陰陽転化」「気の円滑な運行」「無欲の境地」といった、精神的完成度の高さを象徴します。【1】無根樹,花正紅:激しさの内なる静けさ 赤は火や心を象徴しますが、太極拳では激しさを外に出さず、静けさの中に内熱を持つことが重視されます。【2】心隨天命,順氣自來:導かれるままの動き 套路(型)の動きにおいても、無理に動かず、気の流れに心を任せることが「自然な技」へとつながります。【3】陰陽相助,氣運如風:剛と柔、虚と実の転化 太極拳の核心は陰陽の転化であり、その連携が滑らかであるほど、気はまるで風のように流れ、対手を包むように制します。【4】無求無欲,自然是道:技を越えて「道」へ 勝ち負けや上達への執着を捨てたとき、太極拳はただの技術から精神修養の「道(タオ)」へと昇華します。

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