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写意画・無根樹100首-第53首#374

写意画・無根樹100首-第53首#374– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

 無根樹の詩には、天地との調和、陰陽の循環、無限の可能性を秘めた「根源的な力」が表現されています。
 この絵は、中国の武当山に代々伝統的に伝わってきた、符図として観念を写意した写意画で、行気(ぎょうき=気の流れ)によって、観念化された意が画面に宿る技法にて描きます。
座る人物が符図を掲げ、気の流れとともに描かれた写意画。道(タオ)の世界を象徴する霊的な図像が、観る者の心に響き、天地との調和と精神的な静けさをもたらす。 道(タオ)の世界には、「符図(ふず)」と呼ばれる霊的・象徴的な図像があります。
 これは一種の呪符でありながらも、単なる宗教道具にとどまらず、写意的に描かれた霊的絵画で、観る者の精神面に直接働きかける精神感応的な美術としての力を持っています。
 そのため、古来より多くの人々が、不老長寿、健康、吉祥、家庭の調和などを願い、こうした道家的写意画や符図を自宅や書斎、寝室に飾ってきたのです。絵を見ることは、単に美を愛でるのではなく、生活に「道」の気配を招き入れ、心身を調律するための行いとされていました。
 このように写意画は、単なる絵画表現にとどまらず、人の精神・生活・宇宙との調和を媒介する芸術です。
 この写意画は、「目で見るもの」ではなく「心で感じるもの」です。
 それは道(タオ)と通じ、自然の気と共鳴し、観る者の内面を静かに動かす力を持ちます。
 符図や写意画は、古より今に至るまで、”人の魂に語りかける「霊なる絵」”として息づいているのです。
 下記にこの写意画の意となる「哲理詩」無根樹の原文と、現代日本語訳とその解釈を添えておきましたので、是非お読みください。
 ※無根樹の作者「張三丰(1247年〜?)」は、太極拳を確立した人物としても有名で、太極拳にもこの無根樹を適用しました。補足として、武当山に伝わってきた太極拳との関連解釈も記載しておきました。

無根樹・第53首

写意画・無根樹100首-第53首#374– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

原文

無根樹,花正光,心如朗月,氣映星芒。內外如一,形神俱清,動靜隨時,道行無疆。

現代日本語

根のない木に、光を放つ花が咲く。心は澄んだ満月のようで、気は星の光のように周囲を照らす。内と外はひとつに調和し、身体も精神も清らかになる。動と静を時に応じて用いれば、道の歩みには限りがない。

解釈

この詩は、「心と気の発光」「内外一如」「動静自在」「限りなき道の進化」を詠んでいます。【1】無根樹,花正光(むこんじゅ はなまさにひかりなり) 根のない木に咲いた光の花は、肉体に縛られず精神的に放たれる「悟り」や「霊性の輝き」の象徴。不安定な中にこそ光は宿るという意味も含まれます。【2】心如朗月,氣映星芒(こころはろうげつのごとく きはせいぼうをてらす) 満月のように澄み切った心は、気の流れにより星の光のように柔らかく輝く。これは道における「心静則氣清、氣清則神和」の状態を表しています。【3】內外如一,形神俱清(ないがいいちのごとく けいしんともにきよし) 内なる心と外の動きが調和し、肉体と精神の両方が清明であること。これは修練における理想の姿です。【4】動靜隨時,道行無疆(どうじょうときにしたがえば みちのゆききにはきわまりなし) 動と静を状況に応じて変化することで、道には限界がなく、常に進化し続けることができると教えています。

太極拳との関連解釈

第53首は、太極拳の「心気の明澄」「内外の一致」「柔剛の使い分け」「修練の無限性」を象徴しています。【1】無根樹,花正光:精神性の輝き 套路に磨きをかけた後、心から放たれる穏やかな光。それは無言の影響力であり、導師の風格に通じます。【2】心如朗月,氣映星芒:心の静と気の透徹 心を整えれば、気は柔らかく全身に満ち、招式や応用技での変化にも柔らかく対応できる。「朗月」と「星芒」はその光の広がりを表します。【3】內外如一,形神俱清:動きと心の完全な一致 意と動作が一致し、姿勢や呼吸、目線までが調和することで、太極拳の「形意合一」「神形俱妙」が体現されます。【4】動靜隨時,道行無疆:状況に応じた柔軟な対応と無限の深化 敵の動き、環境、心の状態などに応じて柔軟に対応できれば、太極拳の技もまた限界を超えて展開していけます。

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