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写意画・無根樹100首-第54首#286

写意画・無根樹100首-第54首#328– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

 無根樹の詩には、天地との調和、陰陽の循環、無限の可能性を秘めた「根源的な力」が表現されています。
 この絵は、中国の武当山に代々伝統的に伝わってきた、符図として観念を写意した写意画で、行気(ぎょうき=気の流れ)によって、観念化された意が画面に宿る技法にて描きます。
座る人物が符図を掲げ、気の流れとともに描かれた写意画。道(タオ)の世界を象徴する霊的な図像が、観る者の心に響き、天地との調和と精神的な静けさをもたらす。 道(タオ)の世界には、「符図(ふず)」と呼ばれる霊的・象徴的な図像があります。
 これは一種の呪符でありながらも、単なる宗教道具にとどまらず、写意的に描かれた霊的絵画で、観る者の精神面に直接働きかける精神感応的な美術としての力を持っています。
 そのため、古来より多くの人々が、不老長寿、健康、吉祥、家庭の調和などを願い、こうした道家的写意画や符図を自宅や書斎、寝室に飾ってきたのです。絵を見ることは、単に美を愛でるのではなく、生活に「道」の気配を招き入れ、心身を調律するための行いとされていました。
 このように写意画は、単なる絵画表現にとどまらず、人の精神・生活・宇宙との調和を媒介する芸術です。
 この写意画は、「目で見るもの」ではなく「心で感じるもの」です。
 それは道(タオ)と通じ、自然の気と共鳴し、観る者の内面を静かに動かす力を持ちます。
 符図や写意画は、古より今に至るまで、”人の魂に語りかける「霊なる絵」”として息づいているのです。
 下記にこの写意画の意となる「哲理詩」無根樹の原文と、現代日本語訳とその解釈を添えておきましたので、是非お読みください。
 ※無根樹の作者「張三丰(1247年〜?)」は、太極拳を確立した人物としても有名で、太極拳にもこの無根樹を適用しました。補足として、武当山に伝わってきた太極拳との関連解釈も記載しておきました。

この写意画のタオコード・風水・符の詳細

道の哲理において、去るものは還り、昇るものはまた降ります。
「無根樹」第29首は、動と静、満と虚のあいだをめぐる循環の律動を描きます。
静寂とは停止ではなく、流れが源に還ることであることを、この詩は示しています。

構図は内へと旋回し、幾重にも重ねられた墨の円環が、気の呼吸の還流を示します。
周縁の金の線は、拡散した力が再び源へと集う瞬間を暗示し、
存在の輪が静けさへと収束するその微かな鼓動を、観る者に感じさせます。

本作品は「還流の気(Huan Qi)」を象徴し、再生・安定・統合のエネルギーを放ちます。
瞑想室、茶室、静かな書斎など、調和と落ち着きを求める空間に最適です。
円環の流れは五行の「水」に通じ、滞りを解き、精神の連続性を蘇らせます。

この絵が、散じたものを再び結び、心と空間を一つに調える符(タリスマン)として、
還流の気を運ぶ存在でありますように。

無根樹・第54首

写意画・無根樹100首-第54首#328– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

原文

無根樹,花正空,色即是空,空不離色。有為無為,皆歸自然,動靜不二,道體圓融。

現代日本語

根のない木、花はまさに空(くう)。色(しき)はすなわち空(くう)であり、空(くう)は色(しき)と離れない。人の為すことも、無為のあり方も、すべて自然に帰す。動と静は二つにあらず、そこに道の本質は融け合っている。

解釈

この詩は、「色即是空」の思想を基に、太極思想や禅の世界観とも通じる「対立の統合」「無為自然」の境地を表現しています。【1】無根樹,花正空(むこんじゅ はなまさにくうなり) 根のない木に咲く花が「空」であるという表現は、「実体のない美」「一切が空であることの象徴」です。存在は執着ではなく、悟りによって捉えるものとされます。【2】色即是空,空不離色(しきそくぜくう くうふりしき) 『般若心経』の根本。「色(現象世界)は空(本質)」であり、「空は色と離れず」——この二重性は、太極の陰陽にも通じます。【3】有為無為,皆歸自然(ういむい みなじねんにきす) 人が意図して行うこと(有為)も、何もせず自然に任せること(無為)も、結局は自然の法に従っているという理です。【4】動靜不二,道體圓融(どうじょうふに どうたいえんゆう) 動と静は対立せず、道の本質の中に溶け合っている。太極における「動中に静、静中に動」の精神です。

太極拳との関連解釈

第54首は、太極拳修養における「空の理解」「動静一体」「有為と無為の一致」そして「道の円融(融合)」の哲理を深く表現しています。【1】無根樹,花正空:空なる形の体現 型に執着せず、型を通じて無為を目指す段階。型のないところにこそ真の「花」が咲くという教えです。【2】色即是空,空不離色:動作と本質の融合 目に見える動作(色)は心の投影(空)であり、心の空(無執着)は動作(技)を清く自然なものにします。これは「技即道」の理解に通じます。【3】有為無為,皆歸自然:努力と委ねの調和 型を覚える(有為)も、感覚に委ねる動き(無為)も、どちらも自然な流れの中で完成していく。太極拳では「為せずして為す」状態が理想です。【4】動靜不二,道體圓融:対立なき太極の体現 動と静は同時に存在し、区別されるものではなく循環し合う。これこそ太極拳が目指す「無限の変化と調和」の本質です。

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