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写意画・無根樹100首-第63首#569

写意画・無根樹100首-第63首#569– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

 無根樹の詩には、天地との調和、陰陽の循環、無限の可能性を秘めた「根源的な力」が表現されています。
 この絵は、中国の武当山に代々伝統的に伝わってきた、符図として観念を写意した写意画で、行気(ぎょうき=気の流れ)によって、観念化された意が画面に宿る技法にて描きます。
座る人物が符図を掲げ、気の流れとともに描かれた写意画。道(タオ)の世界を象徴する霊的な図像が、観る者の心に響き、天地との調和と精神的な静けさをもたらす。 道(タオ)の世界には、「符図(ふず)」と呼ばれる霊的・象徴的な図像があります。
 これは一種の呪符でありながらも、単なる宗教道具にとどまらず、写意的に描かれた霊的絵画で、観る者の精神面に直接働きかける精神感応的な美術としての力を持っています。
 そのため、古来より多くの人々が、不老長寿、健康、吉祥、家庭の調和などを願い、こうした道家的写意画や符図を自宅や書斎、寝室に飾ってきたのです。絵を見ることは、単に美を愛でるのではなく、生活に「道」の気配を招き入れ、心身を調律するための行いとされていました。
 このように写意画は、単なる絵画表現にとどまらず、人の精神・生活・宇宙との調和を媒介する芸術です。
 この写意画は、「目で見るもの」ではなく「心で感じるもの」です。
 それは道(タオ)と通じ、自然の気と共鳴し、観る者の内面を静かに動かす力を持ちます。
 符図や写意画は、古より今に至るまで、”人の魂に語りかける「霊なる絵」”として息づいているのです。
 下記にこの写意画の意となる「哲理詩」無根樹の原文と、現代日本語訳とその解釈を添えておきましたので、是非お読みください。
 ※無根樹の作者「張三丰(1247年〜?)」は、太極拳を確立した人物としても有名で、太極拳にもこの無根樹を適用しました。補足として、武当山に伝わってきた太極拳との関連解釈も記載しておきました。

無根樹・第63首

写意画・無根樹100首-第63首#569– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

原文

無根樹,花正青,氣隨心動,隨風而行。陰陽協和,無為而無所不成。氣運無窮,隨處可行。

現代日本語

根のない木に、青い花が咲く。気は心に従って動き、風に乗ってどこへでも進む。陰と陽が調和すれば、無為のままでもすべてが成し遂げられる。気の流れは尽きることなく、どこであっても道を進むことができる。

解釈

この詩は、「自由な心の動きと自然との一体化」を表現しています。無根樹に咲く青い花は、柔軟さや流動性を象徴し、気が心に従って巡ることで、あらゆる制限を超えて進んでいけるという境地を語っています。【1】無根樹,花正青(むこんじゅ はなまさにあおし) 根のない木に咲いた青い花は、執着や固定観念のない自由な精神の象徴です。青は「調和」「浄化」「広がり」の意味も持ち、心が澄みわたっている状態を示します。【2】氣隨心動,隨風而行(きはこころにしたがいてうごき かぜにしたがいてゆく) 気は心に従って動き、まるで風に乗るように進んでいく。これは意と気の一致を表し、無理のない自然な動きの美しさを意味します。【3】陰陽協和,無為而無所不成(いんようきょうわし むいにしてなさざるなし) 陰と陽が調和すれば、何かを「為そう」とせずとも、自然の流れの中で全てが達成されていく。これは道家思想における「無為自然」の核心です。【4】氣運無窮,隨處可行(きうんむきゅう ずいしょにゆくべし) 気の流れは尽きることなく巡り、どこにいても道を進むことができる。この句は空間的制限の超越、心身の自在性を象徴しています。

太極拳との関連解釈

第63首は、太極拳の「心と気の一致」「自然な運行」「陰陽調和」「無為の中の達成」をよく示しています。【1】無根樹,花正青:変化を受け入れる柔軟さ 形にとらわれず、常に新しい気づきの中で咲き続ける「青い花」は、動きに対する柔軟な姿勢そのもの。【2】氣隨心動,隨風而行:意到気至の実践 太極拳における「意が到れば気が至る」の原則。心が動けば気が流れ、気が通じれば身体は自然に動き、流れるように技が発動します。【3】陰陽協和,無為而無所不成:最上の太極境地 陰陽の交互運動に逆らわず、完全に自然の中に身を委ねることで、力まずに成すべきことが成る状態。最終的な武道の達成にも通じる考えです。【4】氣運無窮,隨處可行:どこでも修練の場 場所や状況にとらわれることなく、心と気の道が通っていれば、どこでも太極拳を実践できる。この境地は「道は内にあり」とも言えるものです。

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