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写意画・無根樹100首-第72首#426

写意画・無根樹100首-第72首#504– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

 無根樹の詩には、天地との調和、陰陽の循環、無限の可能性を秘めた「根源的な力」が表現されています。
 この絵は、中国の武当山に代々伝統的に伝わってきた、符図として観念を写意した写意画で、行気(ぎょうき=気の流れ)によって、観念化された意が画面に宿る技法にて描きます。
座る人物が符図を掲げ、気の流れとともに描かれた写意画。道(タオ)の世界を象徴する霊的な図像が、観る者の心に響き、天地との調和と精神的な静けさをもたらす。 道(タオ)の世界には、「符図(ふず)」と呼ばれる霊的・象徴的な図像があります。
 これは一種の呪符でありながらも、単なる宗教道具にとどまらず、写意的に描かれた霊的絵画で、観る者の精神面に直接働きかける精神感応的な美術としての力を持っています。
 そのため、古来より多くの人々が、不老長寿、健康、吉祥、家庭の調和などを願い、こうした道家的写意画や符図を自宅や書斎、寝室に飾ってきたのです。絵を見ることは、単に美を愛でるのではなく、生活に「道」の気配を招き入れ、心身を調律するための行いとされていました。
 このように写意画は、単なる絵画表現にとどまらず、人の精神・生活・宇宙との調和を媒介する芸術です。
 この写意画は、「目で見るもの」ではなく「心で感じるもの」です。
 それは道(タオ)と通じ、自然の気と共鳴し、観る者の内面を静かに動かす力を持ちます。
 符図や写意画は、古より今に至るまで、”人の魂に語りかける「霊なる絵」”として息づいているのです。
 下記にこの写意画の意となる「哲理詩」無根樹の原文と、現代日本語訳とその解釈を添えておきましたので、是非お読みください。
 ※無根樹の作者「張三丰(1247年〜?)」は、太極拳を確立した人物としても有名で、太極拳にもこの無根樹を適用しました。補足として、武当山に伝わってきた太極拳との関連解釈も記載しておきました。

無根樹・第72首

写意画・無根樹100首-第72首#504– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

原文

無根樹,花正濃,氣動隨心無外功。陰陽合體如水乳,太極通靈道自通。

現代日本語

根のない木に、濃く咲いた花がある。気は心に従って動き、外からの力を必要としない。陰と陽が溶け合えば、水と乳のように完全に調和する。太極が霊妙に通じていれば、道は自然に開かれていく。

解釈

この詩は「内功の純熟」と「調和の極致による道の自然な開示」を描いています。気と心が完全に一致することで、外部に頼らずともすべてが動き出すという高い境地を示します。【1】無根樹,花正濃(むこんじゅ はなまさにこくさく) 根のない木に、濃密に咲いた花。これは修養が深まり、精神と身体の成熟を象徴しています。表面的な華やかさでなく、内なる充実があってこそ花は濃く咲く。【2】氣動隨心無外功(きうごくしてこころにしたがい がいこうなし) 気は心に従って自然に動く。外からの技や力に頼ることなく、内なる働き(内功)によって自在に動作が行われる「意到氣到」の体現です。【3】陰陽合體如水乳(いんようがったいして みずにゅうのごとし) 陰と陽が水と乳のように完全に融合し、分けることもできない。これは「陰中有陽・陽中有陰」という真の調和状態を意味します。【4】太極通靈道自通(たいきょくれいにかよえば みちおのずからつうず) 太極が霊的に通じれば、道(タオ)は自然に明らかになる。これは無為自然による「悟り」や「真の道の成就」を象徴しています。

太極拳との関連解釈

第72首は、太極拳の「内功の純化と陰陽の完全な融合による道の顕現」をよく示しています。【1】無根樹,花正濃:修養が深まり、成果が自然に現れる 太極拳の長期修練によって、形ではなく「内から咲く力」が現れ、華やかでなくとも濃密な気を帯びた動きとなります。【2】氣動隨心無外功:意と気の一致による内功の発現 型や技巧に頼らず、意がそのまま気を動かす境地。これは「以意導氣、以氣運身(意をもって気を導き、気をもって体を運ぶ)」の実践を意味します。【3】陰陽合體如水乳:対立なき融合、柔中に剛を含む 招式や演武の中で、陰陽の転換が一瞬にして行われ、分け隔てがなくなる。この水乳交融のような状態が、真の太極です。【4】太極通靈道自通:技を越えて道に至る 理に従い、己を空にすれば、太極そのものが霊妙に「道」とつながる。ここに至って初めて、行為のすべてが無為自然となり、道が自然に現れます。

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