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写意画・無根樹100首-第74首#294

写意画・無根樹100首-第74首#306– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

 無根樹の詩には、天地との調和、陰陽の循環、無限の可能性を秘めた「根源的な力」が表現されています。
 この絵は、中国の武当山に代々伝統的に伝わってきた、符図として観念を写意した写意画で、行気(ぎょうき=気の流れ)によって、観念化された意が画面に宿る技法にて描きます。
座る人物が符図を掲げ、気の流れとともに描かれた写意画。道(タオ)の世界を象徴する霊的な図像が、観る者の心に響き、天地との調和と精神的な静けさをもたらす。 道(タオ)の世界には、「符図(ふず)」と呼ばれる霊的・象徴的な図像があります。
 これは一種の呪符でありながらも、単なる宗教道具にとどまらず、写意的に描かれた霊的絵画で、観る者の精神面に直接働きかける精神感応的な美術としての力を持っています。
 そのため、古来より多くの人々が、不老長寿、健康、吉祥、家庭の調和などを願い、こうした道家的写意画や符図を自宅や書斎、寝室に飾ってきたのです。絵を見ることは、単に美を愛でるのではなく、生活に「道」の気配を招き入れ、心身を調律するための行いとされていました。
 このように写意画は、単なる絵画表現にとどまらず、人の精神・生活・宇宙との調和を媒介する芸術です。
 この写意画は、「目で見るもの」ではなく「心で感じるもの」です。
 それは道(タオ)と通じ、自然の気と共鳴し、観る者の内面を静かに動かす力を持ちます。
 符図や写意画は、古より今に至るまで、”人の魂に語りかける「霊なる絵」”として息づいているのです。
 下記にこの写意画の意となる「哲理詩」無根樹の原文と、現代日本語訳とその解釈を添えておきましたので、是非お読みください。
 ※無根樹の作者「張三丰(1247年〜?)」は、太極拳を確立した人物としても有名で、太極拳にもこの無根樹を適用しました。補足として、武当山に伝わってきた太極拳との関連解釈も記載しておきました。

無根樹・第74首

写意画・無根樹100首-第74首#306– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

原文

無根樹,花正新,氣定神閑不染塵。陰陽雙運無所礙,太極自然與天親。

現代日本語

根のない木に、花は新たに咲く。気は定まり、精神は静かで、塵に染まることがない。陰と陽がともに運び、何の妨げもない。太極は自然に通じ、天と親しくつながる。

解釈

この詩は、「静けさの中の力」と「天地との一体化」を語っています。太極の修養において、外からの力に影響されず、心と気が調和し、自然と一体となる境地が描かれています。【1】無根樹,花正新(むこんじゅ はなまさにあらたなり) 根のない木に咲いた新しい花は、不確かな世界における希望や始まりの象徴。不安定の中にも美は生まれるという教えです。【2】氣定神閑不染塵(きさだまり しんしずかにして ちりにそまらず) 気が定まり、精神が落ち着いていれば、外界の混乱に巻き込まれることはありません。心の清浄さの尊さを表しています。【3】陰陽雙運無所礙(いんようそううんして さわりなし) 陰陽の二つの力が同時に動き調和していれば、あらゆる妨げはなくなる。太極における「陰陽合一」の理を詠んでいます。【4】太極自然與天親(たいきょくは しぜんにして てんとしたしむ) 太極の道とは自然そのものであり、それは天と通じ合う境地。宇宙の理との一致を示します。

太極拳との関連解釈

第74首は、太極拳における「清静・調和・自然合一」の理念をよく示しています。【1】無根樹,花正新:始まりの美と柔軟な心 初心者であっても、無為に一歩を踏み出せば、心に新しい花が咲く。これは修練の第一歩を象徴します。【2】氣定神閑不染塵:内功と精神の静けさ 内功を養い、精神を落ち着かせることが太極拳の基本。静中の力は外界の刺激に左右されないという意味でもあります。【3】陰陽雙運無所礙:陰陽の動きと調和の力 太極拳の動作は、陰陽が常に交互に動きつつ、滞ることがないように設計されています。気の流れが自然であれば、障害は生まれません。【4】太極自然與天親:太極拳と宇宙的感応 呼吸・動作・心が自然に一致することで、天と一体となる感覚が養われる。太極拳は単なる技ではなく、天地と一体になる「道」でもあります。

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