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写意画・無根樹100首-第87首#289

写意画・無根樹100首-第87首#496– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

 無根樹の詩には、天地との調和、陰陽の循環、無限の可能性を秘めた「根源的な力」が表現されています。
 この絵は、中国の武当山に代々伝統的に伝わってきた、符図として観念を写意した写意画で、行気(ぎょうき=気の流れ)によって、観念化された意が画面に宿る技法にて描きます。
座る人物が符図を掲げ、気の流れとともに描かれた写意画。道(タオ)の世界を象徴する霊的な図像が、観る者の心に響き、天地との調和と精神的な静けさをもたらす。 道(タオ)の世界には、「符図(ふず)」と呼ばれる霊的・象徴的な図像があります。
 これは一種の呪符でありながらも、単なる宗教道具にとどまらず、写意的に描かれた霊的絵画で、観る者の精神面に直接働きかける精神感応的な美術としての力を持っています。
 そのため、古来より多くの人々が、不老長寿、健康、吉祥、家庭の調和などを願い、こうした道家的写意画や符図を自宅や書斎、寝室に飾ってきたのです。絵を見ることは、単に美を愛でるのではなく、生活に「道」の気配を招き入れ、心身を調律するための行いとされていました。
 このように写意画は、単なる絵画表現にとどまらず、人の精神・生活・宇宙との調和を媒介する芸術です。
 この写意画は、「目で見るもの」ではなく「心で感じるもの」です。
 それは道(タオ)と通じ、自然の気と共鳴し、観る者の内面を静かに動かす力を持ちます。
 符図や写意画は、古より今に至るまで、”人の魂に語りかける「霊なる絵」”として息づいているのです。
 下記にこの写意画の意となる「哲理詩」無根樹の原文と、現代日本語訳とその解釈を添えておきましたので、是非お読みください。
 ※無根樹の作者「張三丰(1247年〜?)」は、太極拳を確立した人物としても有名で、太極拳にもこの無根樹を適用しました。補足として、武当山に伝わってきた太極拳との関連解釈も記載しておきました。

無根樹・第87首

写意画・無根樹100首-第87首#496– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

原文

無根樹,花正發,氣滿周身入太霞。陰陽推演無窮理,太極玄門通大道。

現代日本語

根のない木に、花が今まさに咲き誇っている。気は全身に満ち、太霞の境地へと至る。陰陽の運行は無限の理を推し進め、太極の奥門は大道へと通じている。

解釈

この詩は、「気の充実と高次の境地」「陰陽の永遠なる理」「太極が導く宇宙的真理への門」を表しています。無根樹に咲く盛んな花は、修養の成果が開花した象徴であり、全身に満ちる気と、それが到達する霊妙な境地を語ります。また、陰陽の原理は無尽蔵であり、太極を通して人は玄妙なる門をくぐり、大道=宇宙的な真理に触れることができると示されています。【1】無根樹,花正發(むこんじゅ はなまさにひらく) 根のない木に今まさに開花する花は、内功が満ちて外に表れる象徴であり、精神修養や実践によって成果が実を結ぶ瞬間を表します。【2】氣滿周身入太霞(き しゅうしんにみちて たいかにいる) 気が体内すべてに満ちることで、太霞――霊妙なる高次の気の世界に至る。これは「周天」や「昇華」といった内丹術の概念とも重なり、意の深化を表現しています。【3】陰陽推演無窮理(いんようすいえんして むきゅうのことわり) 陰陽の運行・展開は無限であり、その中にこそ真理がある。この「無窮理」とは、常に変化し続ける世界の理(ことわり)そのものです。【4】太極玄門通大道(たいきょくは げんもんをとおり だいどうにつうず) 太極の奥義とは、玄(奥深い)なる門を開き、ついには大道(自然の理、宇宙の真理)に至る道である。

太極拳との関連解釈

第87首は、太極拳の「気の充実」「陰陽変化の深さ」「武を超えた修練としての価値」を伝えています。【1】無根樹,花正發:成果としての動きの美しさ 継続的な練功によって、心身の状態が整い、技と精神が一致したときに花が咲く。花はその成熟と表現の象徴です。【2】氣滿周身入太霞:気の統一と昇華 太極拳において、気が手足・指先まで行き届くと、動作に澱みがなくなり、身体が空気の中を舞うように軽やかになります。これが「太霞」=理想的な気の境地への到達です。【3】陰陽推演無窮理:深まり続ける太極拳の理解 陰陽の使い方(虚実の転換、相手との関係性の変化)は、稽古を重ねるたびに新たな発見があります。無限の理を体感することが、修養の証となります。【4】太極玄門通大道:技を超えた「道」としての太極 太極拳は単なる格闘技術ではなく、心身の調和と宇宙観に通じる「修道」の手段であり、それを通して大道に至ることができるという思想です。

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