写意画・無根樹24章-補篇第2章#287

無根樹の詩には、天地との調和、陰陽の循環、無限の可能性を秘めた「根源的な力」が表現されています。
この絵は、中国の武当山に代々伝統的に伝わってきた、符図として観念を写意した写意画で、行気(ぎょうき=気の流れ)によって、観念化された意が画面に宿る技法にて描きます。
道(タオ)の世界には、「符図(ふず)」と呼ばれる霊的・象徴的な図像があります。
これは一種の呪符でありながらも、単なる宗教道具にとどまらず、写意的に描かれた霊的絵画で、観る者の精神面に直接働きかける精神感応的な美術としての力を持っています。
そのため、古来より多くの人々が、不老長寿、健康、吉祥、家庭の調和などを願い、こうした道家的写意画や符図を自宅や書斎、寝室に飾ってきたのです。絵を見ることは、単に美を愛でるのではなく、生活に「道」の気配を招き入れ、心身を調律するための行いとされていました。
このように写意画は、単なる絵画表現にとどまらず、人の精神・生活・宇宙との調和を媒介する芸術です。
この写意画は、「目で見るもの」ではなく「心で感じるもの」です。
それは道(タオ)と通じ、自然の気と共鳴し、観る者の内面を静かに動かす力を持ちます。
符図や写意画は、古より今に至るまで、”人の魂に語りかける「霊なる絵」”として息づいているのです。
下記にこの写意画の意となる「哲理詩」無根樹の原文と、現代日本語訳とその解釈を添えておきましたので、是非お読みください。
※無根樹の作者「張三丰(1247年〜?)」は、太極拳を確立した人物としても有名で、太極拳にもこの無根樹を適用しました。補足として、武当山に伝わってきた太極拳との関連解釈も記載しておきました。
この写意画のタオコード・風水・符の詳細
「無根樹 補章Ⅱ 第287首」は、神聖なヴィジョンを描き出します:蟾光が霊芝に降り注ぎ、金蓮が玉のように花開く。早摘みの苗の尊さ、滅びない命への秘められた道を静かに語ります。
構図は荘厳かつ洗練され、濃墨が根を支え、そこから金の光と淡雪のような靄が上へと昇ります。筆致は、真の生命力が外の過剰からではなく、繊細で集中された成長から生まれるという観念を体現しています。観る者に、自然の静けさの律動を読みとり、内なる変容へと目覚めるよう誘います。
本作品は「昇寿の気」を象徴し、育成・明晰・微細な力の上昇エネルギーを放ちます。書斎や茶室、思索の場など、真の洗練と静穏を求める空間に最適です。金色は五行の「金」に属し、明晰と精度をもたらし、濃淡の墨のグラデーションは滞りを祓い、再生の流れを呼び込みます。
この絵が、静かなる符(タリスマン)として、永遠の種を運び、精神・芸術・意図をひとつに繋ぐ存在でありますように。
無根樹・補篇第2章

原文
無根樹,花正芳,早被東君發一陽。抽芽秀,結花房,休把仙苗作等閒。蟾光灑處靈芝長,水浸金蓮玉作房。摘來嚐,味無雙,端的長生不老方。
現代日本語
根なき木に咲いた花は芳しく、早くも東君(春の神)が一陽を発している。芽を出し、花房を結び、仙なる苗を軽んじてはならぬ。月の光が注げば、霊芝が育ち、水に浮かぶ金蓮には玉のような房が成る。それを摘んで味わえば、比類なき味であり、真に長生不老の妙薬となる。
解釈
•「東君」=春の神、すなわち新たな生命の兆し。•「仙苗」=霊的成長の始まり。大事にすべき種子。•「霊芝」「金蓮」=長寿や霊性の象徴。•「味無雙」=体験しなければわからぬ、至高の悟り。
太極拳との関連解釈
•「発一陽」は、無為自然の純粋な心の働きから、気が生まれる瞬間を表します。•芽を育てるように、毎日の修練を重ねて「花房」を結ぶ。•軽んじてはならない基本動作の反復(套路)が、やがて不老長寿に繋がるような深遠な力を持つとされます。
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