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写意画・無根樹100首-第35首#313

写意画・無根樹100首-第35首#313– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

 無根樹の詩には、天地との調和、陰陽の循環、無限の可能性を秘めた「根源的な力」が表現されています。
 この絵は、中国の武当山に代々伝統的に伝わってきた、符図として観念を写意した写意画で、行気(ぎょうき=気の流れ)によって、観念化された意が画面に宿る技法にて描きます。
座る人物が符図を掲げ、気の流れとともに描かれた写意画。道(タオ)の世界を象徴する霊的な図像が、観る者の心に響き、天地との調和と精神的な静けさをもたらす。 道(タオ)の世界には、「符図(ふず)」と呼ばれる霊的・象徴的な図像があります。
 これは一種の呪符でありながらも、単なる宗教道具にとどまらず、写意的に描かれた霊的絵画で、観る者の精神面に直接働きかける精神感応的な美術としての力を持っています。
 そのため、古来より多くの人々が、不老長寿、健康、吉祥、家庭の調和などを願い、こうした道家的写意画や符図を自宅や書斎、寝室に飾ってきたのです。絵を見ることは、単に美を愛でるのではなく、生活に「道」の気配を招き入れ、心身を調律するための行いとされていました。
 このように写意画は、単なる絵画表現にとどまらず、人の精神・生活・宇宙との調和を媒介する芸術です。
 この写意画は、「目で見るもの」ではなく「心で感じるもの」です。
 それは道(タオ)と通じ、自然の気と共鳴し、観る者の内面を静かに動かす力を持ちます。
 符図や写意画は、古より今に至るまで、”人の魂に語りかける「霊なる絵」”として息づいているのです。
 下記にこの写意画の意となる「哲理詩」無根樹の原文と、現代日本語訳とその解釈を添えておきましたので、是非お読みください。
 ※無根樹の作者「張三丰(1247年〜?)」は、太極拳を確立した人物としても有名で、太極拳にもこの無根樹を適用しました。補足として、武当山に伝わってきた太極拳との関連解釈も記載しておきました。

無根樹・第35首

写意画・無根樹100首-第35首#313– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

原文

無根樹,花正黃,龍鳳呈祥,氣勢雄。天地有情,氣隨形,行者觀,心隨氣。

現代日本語

根のない木に、花は鮮やかな黄色に咲く。龍と鳳凰が吉兆を示し、気は堂々とみなぎる。天地に情があれば、気は形に従って巡る。その姿を観る行者は、気に心を乗せていく。

解釈

この詩は、「気と形」「心と気」の一致を通じた太極的世界観と、心身の一体化の重要性を示しています。【1】無根樹,花正黃(むこんじゅ はなまさにきばななり) 根のない木に咲いた黄色い花は、「中央の土」に属する色でもあり、安定と成熟を象徴します。不安定な状況でも完成された力が宿ることを表しています。【2】龍鳳呈祥,氣勢雄(りゅうほうしょうをあらわし きせいたけし) 龍と鳳凰という霊獣が吉兆を示す中、強大な気の流れが周囲を満たす様子。これは内功の充実や、心身の高まりを象徴します。【3】天地有情,氣隨形(てんちじょうあり きはかたちにしたがう) 宇宙は無感情ではなく、情がある存在。気は心や体の動き(形)に従って流れます。これは「意到すれば気到る」の理を表します。【4】行者觀,心隨氣(ぎょうじゃみて こころはきにしたがう) 修練者はその流れを観察し、心を気の流れに合わせる。心・気・形が一体となる理想の姿を描いています。

太極拳との関連解釈

第35首は、太極拳の「心・気・形の統一」と「天地自然との調和」の教えを深く反映しています。【1】無根樹,花正黃:中心の確立と気の充実 土に属する黄色は「中(中央)」の象徴。太極拳における中正安舒の確立や、内功が成熟した状態を表しています。【2】龍鳳呈祥,氣勢雄:気の流れの高まりと発動 龍は動、鳳は静の象徴。その両者が現れることで、陰陽の調和と、気の勢いが極まる様子が示されます。対錬などでの発勁や運化の核心です。【3】天地有情,氣隨形:気は意と形に従う 動作(形)に心(意)が伴うことで、気が自然と導かれる。「気は形に随い、心は気に随う」の基本原理がここにあります。【4】行者觀,心隨氣:観察と一致による修養 観照とは、心を内に向けて流れを感じること。気の運行を観察することで、心もまたそれに調和し、太極拳の内面性を深めることができます。

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