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写意画・無根樹100首-第22首#457

写意画・無根樹100首-第22首#457– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

 無根樹の詩には、天地との調和、陰陽の循環、無限の可能性を秘めた「根源的な力」が表現されています。
 この絵は、中国の武当山に代々伝統的に伝わってきた、符図として観念を写意した写意画で、行気(ぎょうき=気の流れ)によって、観念化された意が画面に宿る技法にて描きます。
座る人物が符図を掲げ、気の流れとともに描かれた写意画。道(タオ)の世界を象徴する霊的な図像が、観る者の心に響き、天地との調和と精神的な静けさをもたらす。 道(タオ)の世界には、「符図(ふず)」と呼ばれる霊的・象徴的な図像があります。
 これは一種の呪符でありながらも、単なる宗教道具にとどまらず、写意的に描かれた霊的絵画で、観る者の精神面に直接働きかける精神感応的な美術としての力を持っています。
 そのため、古来より多くの人々が、不老長寿、健康、吉祥、家庭の調和などを願い、こうした道家的写意画や符図を自宅や書斎、寝室に飾ってきたのです。絵を見ることは、単に美を愛でるのではなく、生活に「道」の気配を招き入れ、心身を調律するための行いとされていました。
 このように写意画は、単なる絵画表現にとどまらず、人の精神・生活・宇宙との調和を媒介する芸術です。
 この写意画は、「目で見るもの」ではなく「心で感じるもの」です。
 それは道(タオ)と通じ、自然の気と共鳴し、観る者の内面を静かに動かす力を持ちます。
 符図や写意画は、古より今に至るまで、”人の魂に語りかける「霊なる絵」”として息づいているのです。
 下記にこの写意画の意となる「哲理詩」無根樹の原文と、現代日本語訳とその解釈を添えておきましたので、是非お読みください。
 ※無根樹の作者「張三丰(1247年〜?)」は、太極拳を確立した人物としても有名で、太極拳にもこの無根樹を適用しました。補足として、武当山に伝わってきた太極拳との関連解釈も記載しておきました。

無根樹・第22首

写意画・無根樹100首-第22首#457– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

原文

無根樹,花正圓,周無缺陷照萬川。不偏不倚中正氣,天地合和一線連。

現代日本語

根のない木に、円く咲いた花。その丸さは欠けることなく、万の川を照らす。かたよらず、かたむかず、気は中庸の道を行き、天地の調和が一本の線でつながる。

解釈

この詩は、完成・調和・中庸の精神を詠んだものです。【1】無根樹,花正圓(むこんじゅ はなまさにまるし) 根のない木に円く咲いた花は、「完全性」や「調和の美」を象徴しています。土台がなくとも内的な均衡を持つことの可能性を示唆します。【2】周無缺陷照萬川(しゅうにけっけつなく ばんせんをてらす) “周”は円周、つまり隙のない全体性を意味し、万の川とは全世界や人々。自らが完く在ることが、外界へと光を届ける力になります。【3】不偏不倚中正氣(へんせず よりかたよらず ちゅうせいのき) 中正(ちゅうせい)とは、偏らず、真ん中にあること。【4】天地合和一線連(てんちごうわして いっせんつらなる) 天地、陰陽、心身が一体となり、すべてが一本の気の流れでつながる様子。これは「意と動作」「上下の調和」「体と心」が一致する理想形です。

太極拳との関連解釈

この詩は、太極拳における「中正安舒(ちゅうせいあんじょ)」の境地を如実に表しています。【1】無根樹,花正圓:円は完成・調和の象徴 太極拳の動きは「円」であり、直線的な力ではなく、滑らかに連なる力を重視します。円満な力の流れは、対立を和らげます。【2】周無缺陷照萬川:欠けのない構えは周囲に影響を与える 自分自身が整うことで、周囲にも調和のエネルギーを波及させることができます。これは「形の整い=心の整い」とも言える修養観です。【3】不偏不倚中正氣:中心を保つことの強さ 太極拳では、重心を左右に偏らせず、下腹(丹田)に据えることが最重要です。偏らぬ気は、どこにも負荷を残さず、自然体を作ります。太極拳においては最も重要とされる「中心軸」の概念に通じ、力が一方向に流れないことで安定性を保ちます。【4】天地合和一線連:一貫した気の流れ 頭から足裏までを「一線でつなげる」ような意が求められます。この一線は、天地の氣の通路でもあり、太極拳では「一動一静、皆通陰陽」と呼ばれる哲理と一致します。

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