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写意画・無根樹100首-第45首#413

写意画・無根樹100首-第45首#413– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

 無根樹の詩には、天地との調和、陰陽の循環、無限の可能性を秘めた「根源的な力」が表現されています。
 この絵は、中国の武当山に代々伝統的に伝わってきた、符図として観念を写意した写意画で、行気(ぎょうき=気の流れ)によって、観念化された意が画面に宿る技法にて描きます。
座る人物が符図を掲げ、気の流れとともに描かれた写意画。道(タオ)の世界を象徴する霊的な図像が、観る者の心に響き、天地との調和と精神的な静けさをもたらす。 道(タオ)の世界には、「符図(ふず)」と呼ばれる霊的・象徴的な図像があります。
 これは一種の呪符でありながらも、単なる宗教道具にとどまらず、写意的に描かれた霊的絵画で、観る者の精神面に直接働きかける精神感応的な美術としての力を持っています。
 そのため、古来より多くの人々が、不老長寿、健康、吉祥、家庭の調和などを願い、こうした道家的写意画や符図を自宅や書斎、寝室に飾ってきたのです。絵を見ることは、単に美を愛でるのではなく、生活に「道」の気配を招き入れ、心身を調律するための行いとされていました。
 このように写意画は、単なる絵画表現にとどまらず、人の精神・生活・宇宙との調和を媒介する芸術です。
 この写意画は、「目で見るもの」ではなく「心で感じるもの」です。
 それは道(タオ)と通じ、自然の気と共鳴し、観る者の内面を静かに動かす力を持ちます。
 符図や写意画は、古より今に至るまで、”人の魂に語りかける「霊なる絵」”として息づいているのです。
 下記にこの写意画の意となる「哲理詩」無根樹の原文と、現代日本語訳とその解釈を添えておきましたので、是非お読みください。
 ※無根樹の作者「張三丰(1247年〜?)」は、太極拳を確立した人物としても有名で、太極拳にもこの無根樹を適用しました。補足として、武当山に伝わってきた太極拳との関連解釈も記載しておきました。

無根樹・第45首

写意画・無根樹100首-第45首#413– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

原文

無根樹,花正白,空無一物,心隨氣行。陰陽生化,氣順自然,無為而無所不成。

現代日本語

根のない木に、白い花が咲く。空には何もなく、心は気の流れに従って動く。陰と陽は互いに生み出し合い、気は自然に順応して巡る。何も為さずとも、すべては成就されていく。

解釈

この詩は、「白=純粋」「空=無執着」「心と気の調和」「陰陽の生化作用」「無為自然の達成力」という、道家の核心を詠んでいます。【1】無根樹,花正白(むこんじゅ はなまさにしろし) 白い花は無垢・純粋・無執着の象徴。根のない木でも、白く咲く花は物事の本質に染まらぬ精神の自由さを表します。【2】空無一物,心隨氣行(くうにしていちぶつなく こころはきにしたがいてゆく) 執着のない空の境地において、心は気の流れに従って自然に動く。これは「無念無想」「心気一致」の理を示しています。【3】陰陽生化,氣順自然(いんようしょうか きはしぜんにしたがう) 陰と陽が互いに助け合って新たなものを生み出し、気はそれに従って自然に運行される。これは「陰陽転化」の原理そのものです。【4】無為而無所不成(むいにしてなさざるなし) あえて何かを為そうとしなくても、自然の道理に従えば、あらゆることが成就していく。まさに老子が説いた「無為自然」の完成形です。

太極拳との関連解釈

第45首は、太極拳の根本である「無為」「気と心の一致」「陰陽転化」「自然の力による成就」を象徴的に表現しています。【1】無根樹,花正白:無為と純粋性の象徴 太極拳では、無為であるほど自然な動きが生まれます。白い花は、作為のない美しさ=技を超えた境地を意味します。【2】空無一物,心隨氣行:心気合一と自然の動き 套路や対錬の中で、心が無であれば、気は自由に流れ、それに従って動作も自然と整っていきます。【3】陰陽生化,氣順自然:剛柔の転化と調和 太極拳における陰陽の運用(虚実、柔剛など)を通して、力みのない動作と絶え間ない気の流れが実現されます。【4】無為而無所不成:技と心が道に溶ける瞬間 技巧に囚われず、自然の理に委ねることで、結果としてすべての技が成る。太極拳の最終段階はまさに「無為にして全てを為す」境地です。

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