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写意画・無根樹100首-第61首#488

写意画・無根樹100首-第61首#488– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

 無根樹の詩には、天地との調和、陰陽の循環、無限の可能性を秘めた「根源的な力」が表現されています。
 この絵は、中国の武当山に代々伝統的に伝わってきた、符図として観念を写意した写意画で、行気(ぎょうき=気の流れ)によって、観念化された意が画面に宿る技法にて描きます。
座る人物が符図を掲げ、気の流れとともに描かれた写意画。道(タオ)の世界を象徴する霊的な図像が、観る者の心に響き、天地との調和と精神的な静けさをもたらす。 道(タオ)の世界には、「符図(ふず)」と呼ばれる霊的・象徴的な図像があります。
 これは一種の呪符でありながらも、単なる宗教道具にとどまらず、写意的に描かれた霊的絵画で、観る者の精神面に直接働きかける精神感応的な美術としての力を持っています。
 そのため、古来より多くの人々が、不老長寿、健康、吉祥、家庭の調和などを願い、こうした道家的写意画や符図を自宅や書斎、寝室に飾ってきたのです。絵を見ることは、単に美を愛でるのではなく、生活に「道」の気配を招き入れ、心身を調律するための行いとされていました。
 このように写意画は、単なる絵画表現にとどまらず、人の精神・生活・宇宙との調和を媒介する芸術です。
 この写意画は、「目で見るもの」ではなく「心で感じるもの」です。
 それは道(タオ)と通じ、自然の気と共鳴し、観る者の内面を静かに動かす力を持ちます。
 符図や写意画は、古より今に至るまで、”人の魂に語りかける「霊なる絵」”として息づいているのです。
 下記にこの写意画の意となる「哲理詩」無根樹の原文と、現代日本語訳とその解釈を添えておきましたので、是非お読みください。
 ※無根樹の作者「張三丰(1247年〜?)」は、太極拳を確立した人物としても有名で、太極拳にもこの無根樹を適用しました。補足として、武当山に伝わってきた太極拳との関連解釈も記載しておきました。

無根樹・第61首

写意画・無根樹100首-第61首#488– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

原文

無根樹,花正銀,月光照影靜中新。內守清寧心不動,優姿承風自輕塵。

現代日本語

根のない木に、銀の花が咲く。月の光が影を照らし、静寂の中に花は咲く。内に平穏を保つ心は揺らがず、その優雅な姿は風を受けて、塵のように軽やかに揺れる。

解釈

この詩は、「内面の静けさと自然との調和」を象徴しています。根のない木に咲く銀の花は、執着や固執のない清らかな存在であり、心が平穏であれば外の変化にも影響されないことを示します。【1】無根樹,花正銀(むこんじゅ はなまさにぎん)根のない木に咲いた銀の花は、純粋さと静寂の象徴。物質的な根を持たずとも、輝きと存在感を持って咲く姿に真の自立を見出せます。【2】月光照影靜中新(げっこうかげをてらし しずけきうちにあらたなり)月光が周囲の影を静かに照らすように、心の静けさの中に新たな気づきが生まれます。夜の中でこそ、明るさは映えるのです。【3】內守清寧心不動(うちにせいねいをまもり こころうごかず)どんな状況でも内なる心の清らかさと安定を保ち続けることができれば、外界に左右されることはありません。【4】優姿承風自輕塵(ゆうし かぜをうけて おのずからちりのごとくかるし)風に身をまかせる花のように、自然の流れに身をゆだねることで、執着から解放され、軽やかに生きられるという教えです。

太極拳との関連解釈

第61首は、太極拳の核心である「静中の動」「無為自然」を体現しています。【1】無根樹,花正銀:執着なき美しさと精神的独立 形にとらわれない存在でありながら、なお咲く花。それは太極拳における“型を超えた在り方”を象徴します。【2】月光照影靜中新:静寂の中の感知と発見 太極拳では、静けさの中で気配を察知し、相手との気の交わりを深めます。この一節は「以静制動(せいでどうをせいす)」の思想と呼応します。【3】內守清寧心不動:内功と定力の象徴 太極拳においては、たとえ相手の動きに反応する場面でも、内心の平静を保ち、気が乱れないことが求められます。【4】優姿承風自輕塵:無為自然の体現 風に従いながらも自分を保つ。それは太極拳の柔らかさと、反発せずに対応する“化勁”の技法と一致します。

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