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写意画・無根樹100首-第94首#323

写意画・無根樹100首-第94首#323– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

 無根樹の詩には、天地との調和、陰陽の循環、無限の可能性を秘めた「根源的な力」が表現されています。
 この絵は、中国の武当山に代々伝統的に伝わってきた、符図として観念を写意した写意画で、行気(ぎょうき=気の流れ)によって、観念化された意が画面に宿る技法にて描きます。
座る人物が符図を掲げ、気の流れとともに描かれた写意画。道(タオ)の世界を象徴する霊的な図像が、観る者の心に響き、天地との調和と精神的な静けさをもたらす。 道(タオ)の世界には、「符図(ふず)」と呼ばれる霊的・象徴的な図像があります。
 これは一種の呪符でありながらも、単なる宗教道具にとどまらず、写意的に描かれた霊的絵画で、観る者の精神面に直接働きかける精神感応的な美術としての力を持っています。
 そのため、古来より多くの人々が、不老長寿、健康、吉祥、家庭の調和などを願い、こうした道家的写意画や符図を自宅や書斎、寝室に飾ってきたのです。絵を見ることは、単に美を愛でるのではなく、生活に「道」の気配を招き入れ、心身を調律するための行いとされていました。
 このように写意画は、単なる絵画表現にとどまらず、人の精神・生活・宇宙との調和を媒介する芸術です。
 この写意画は、「目で見るもの」ではなく「心で感じるもの」です。
 それは道(タオ)と通じ、自然の気と共鳴し、観る者の内面を静かに動かす力を持ちます。
 符図や写意画は、古より今に至るまで、”人の魂に語りかける「霊なる絵」”として息づいているのです。
 下記にこの写意画の意となる「哲理詩」無根樹の原文と、現代日本語訳とその解釈を添えておきましたので、是非お読みください。
 ※無根樹の作者「張三丰(1247年〜?)」は、太極拳を確立した人物としても有名で、太極拳にもこの無根樹を適用しました。補足として、武当山に伝わってきた太極拳との関連解釈も記載しておきました。

無根樹・第94首

写意画・無根樹100首-第94首#323– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

原文

無根樹,花正香,氣走經脈體自強。陰陽轉合神氣旺,太極功成道自彰。

現代日本語

根のない木に、香しい花が咲いている。気は経脈を巡って全身に行き渡り、身体は自然と強くなる。陰と陽がめぐり合い、精神と気は盛んとなり、太極の功が成れば、その道はおのずと明らかにあらわれる。

解釈

この詩は、「身体の強化」「気の巡り」「陰陽の融合による神気の充実」「修養の成果として自然に現れる道のあらわれ」を語っています。香しい花は、力みのない美と内から放たれる充実感を象徴します。【1】無根樹,花正香(むこんじゅ はなまさにかんばし) 根のない木に咲く香しい花は、自然でありながら内に充実を備えた存在の象徴。「無為自然」による精神の美しさを示しています。【2】氣走經脈體自強(き けいみゃくをはしり からだ おのずからつよし) 気が全身の経絡を巡れば、血流が整い、内臓も活性化され、身体は内側から強さを得る。これは気が経絡に沿って作用することの効果を示しています。【3】陰陽轉合神氣旺(いんよう てんごうすれば しんき さかん) 陰陽が循環し融合することで、精神(神)と生命力(気)は充実し、活力がみなぎる。これは陰陽の調和と統一の結果としての精神的高揚です。【4】太極功成道自彰(たいきょく こうなれば みち おのずからあらわる) 太極功の修練が成就すれば、何も示さずとも、その道(道理・徳・技)は自然に周囲にあらわれていく。これは「有為の無為」「語らずして語る」境地を指しています。

太極拳との関連解釈

【1】無根樹,花正香:気品と自然な完成 太極拳の極意は、外からの強さではなく、内側から自然に香り立つような気品と充実。派手さよりも、静かな中に力が宿る様を体現します。【2】氣走經脈體自強:健康は流れから生まれる 自然心、自然呼吸、動作によって気が経絡を巡ることで、身体が活性化され、免疫力も高まります。太極拳は単なる運動ではなく「流れ」の武道であることが分かります。【3】陰陽轉合神氣旺:統合からくる力と明晰 陰と陽の調和は、内面的な安定だけでなく、精神力や気力の充実にもつながります。静と動のバランスがもたらす「神気」は、練功によって深く体感されます。【4】太極功成道自彰:成果は語らずともにじみ出る 真に太極拳を身につけた人は、その所作や振る舞いに自然と「道」が現れます。これは「不言実行」や「身教」の思想と共鳴し、修養の終着点を示します。

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