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写意画・無根樹100首-首外第11首#350

写意画・無根樹100首-首外第11首#350– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

 無根樹の詩には、天地との調和、陰陽の循環、無限の可能性を秘めた「根源的な力」が表現されています。
 この絵は、中国の武当山に代々伝統的に伝わってきた、符図として観念を写意した写意画で、行気(ぎょうき=気の流れ)によって、観念化された意が画面に宿る技法にて描きます。
座る人物が符図を掲げ、気の流れとともに描かれた写意画。道(タオ)の世界を象徴する霊的な図像が、観る者の心に響き、天地との調和と精神的な静けさをもたらす。 道(タオ)の世界には、「符図(ふず)」と呼ばれる霊的・象徴的な図像があります。
 これは一種の呪符でありながらも、単なる宗教道具にとどまらず、写意的に描かれた霊的絵画で、観る者の精神面に直接働きかける精神感応的な美術としての力を持っています。
 そのため、古来より多くの人々が、不老長寿、健康、吉祥、家庭の調和などを願い、こうした道家的写意画や符図を自宅や書斎、寝室に飾ってきたのです。絵を見ることは、単に美を愛でるのではなく、生活に「道」の気配を招き入れ、心身を調律するための行いとされていました。
 このように写意画は、単なる絵画表現にとどまらず、人の精神・生活・宇宙との調和を媒介する芸術です。
 この写意画は、「目で見るもの」ではなく「心で感じるもの」です。
 それは道(タオ)と通じ、自然の気と共鳴し、観る者の内面を静かに動かす力を持ちます。
 符図や写意画は、古より今に至るまで、”人の魂に語りかける「霊なる絵」”として息づいているのです。
 下記にこの写意画の意となる「哲理詩」無根樹の原文と、現代日本語訳とその解釈を添えておきましたので、是非お読みください。
 ※無根樹の作者「張三丰(1247年〜?)」は、太極拳を確立した人物としても有名で、太極拳にもこの無根樹を適用しました。補足として、武当山に伝わってきた太極拳との関連解釈も記載しておきました。

無根樹・首外第11首

写意画・無根樹100首-首外第11首#350– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

原文

無根樹,花正紅,天高地厚,四時循環。風起雲涌,氣衝天,知者觀,無形可見。

現代日本語

根のない木に、紅い花が咲いている。天は高く、地は厚く、四季は巡り続ける。風が起こり、雲が湧き、気は天を突き上げる。知る者は観て、そこに形なきものを見出す。

解釈

この詩は、「天地自然の壮大な運行」と「無形を観る内的洞察力」を語っています。根なき木に咲く赤い花は、変わらぬ宇宙の摂理の中で生きる存在の一つとして位置づけられ、「無形の働き」を見極める重要性を示しています。【1】無根樹,花正紅(むこんじゅ はなまさにくれない) 根を持たぬ木に咲く赤い花は、今を生きる生命の鮮やかさを示す。地に縛られない「気の自由な流れ」の象徴でもある。【2】天高地厚,四時循環(てんはたかく ちはあつく しじじゅんかんす) 天地の大いなる構造と、絶え間ない季節の移り変わりは、全てが自然の法則に従って生まれ、育まれることを暗示する。【3】風起雲涌,氣衝天(かぜおこり くもわき き てんをつく) 風や雲の動き、気の上昇が、天を突き上げるほどの勢いを生み出す表現。内に蓄えた気が一気に放たれる力を表す。【4】知者觀,無形可見(ちしゃはみて むけい みるべし) 真に知る者は、目に見えぬものを観察し、その実体を感じ取ることができる。「気」や「意」がまさにその対象である。

太極拳との関連解釈

首外第11首は、太極拳の「天地自然と連動し、無形を観る智慧」を強調しています。【1】無根樹,花正紅:縛られずに咲く精神 無根であることは、柔軟性と自由を意味する。地に足がついていなくても、気が充実していれば美しく咲ける。これは太極拳における根を持たない歩法にも通じる。【2】天高地厚,四時循環:自然との一致 太極拳の動きは、宇宙の法則に沿った流れで成り立っている。四時の変化に倣い、動静を正しく使い分けることが修練の基本である。【3】風起雲涌,氣衝天:内なる力の放出 太極拳では、意をもって気を内から外へ押し出す。この句は、練功を通して蓄えた気が爆発的に放出される「発勁」の状態を示している。【4】知者觀,無形可見:見えぬ力を知る感性 太極拳の深い修練では、目に見えぬ気や意の流れを感じ、扱うことが重要となる。これを理解するには、理論を超えた「観」の力が必要とされる。

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