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写意画・無根樹100首-第73首#511

写意画・無根樹100首-第73首#514– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

 無根樹の詩には、天地との調和、陰陽の循環、無限の可能性を秘めた「根源的な力」が表現されています。
 この絵は、中国の武当山に代々伝統的に伝わってきた、符図として観念を写意した写意画で、行気(ぎょうき=気の流れ)によって、観念化された意が画面に宿る技法にて描きます。
座る人物が符図を掲げ、気の流れとともに描かれた写意画。道(タオ)の世界を象徴する霊的な図像が、観る者の心に響き、天地との調和と精神的な静けさをもたらす。 道(タオ)の世界には、「符図(ふず)」と呼ばれる霊的・象徴的な図像があります。
 これは一種の呪符でありながらも、単なる宗教道具にとどまらず、写意的に描かれた霊的絵画で、観る者の精神面に直接働きかける精神感応的な美術としての力を持っています。
 そのため、古来より多くの人々が、不老長寿、健康、吉祥、家庭の調和などを願い、こうした道家的写意画や符図を自宅や書斎、寝室に飾ってきたのです。絵を見ることは、単に美を愛でるのではなく、生活に「道」の気配を招き入れ、心身を調律するための行いとされていました。
 このように写意画は、単なる絵画表現にとどまらず、人の精神・生活・宇宙との調和を媒介する芸術です。
 この写意画は、「目で見るもの」ではなく「心で感じるもの」です。
 それは道(タオ)と通じ、自然の気と共鳴し、観る者の内面を静かに動かす力を持ちます。
 符図や写意画は、古より今に至るまで、”人の魂に語りかける「霊なる絵」”として息づいているのです。
 下記にこの写意画の意となる「哲理詩」無根樹の原文と、現代日本語訳とその解釈を添えておきましたので、是非お読みください。
 ※無根樹の作者「張三丰(1247年〜?)」は、太極拳を確立した人物としても有名で、太極拳にもこの無根樹を適用しました。補足として、武当山に伝わってきた太極拳との関連解釈も記載しておきました。

無根樹・第73首

写意画・無根樹100首-第73首#514– 道(タオ)の哲理詩に基づく写意画アート作品

原文

無根樹,花正遠,萬象皆空不染塵。陰陽妙理在心意,太極之道貴自然。

現代日本語

根のない木に、花は遠く静かに咲いている。万物は空であり、塵に染まることはない。陰陽の妙理は心と意の中にあり、太極の道は自然を貴び、それに従って成り立つ。

解釈

この詩は、「空(くう)の認識」と「自然への帰依」を象徴しています。無根樹に咲く遠くの花は、物質や執着から離れた精神の在り方を示しています。【1】無根樹,花正遠(むこんじゅ はなまさにとおく)根のない木に、遠くの花が静かに咲いている。それは物理的な距離というよりも、執着を離れた境地を表し、悟りへの道を象徴しています。【2】萬象皆空不染塵(ばんしょうみなそらにしてちりにそまらず)万物の現象はすべて空であり、塵(煩悩)に染まることはない。この句は、仏教的な「空」の思想を含み、万象を超越した心の静けさを示します。【3】陰陽妙理在心意(いんようのみょうり しんいにあり)陰と陽の絶妙な理は、心と意の中に存在している。宇宙の根本原理は、心の動きとその意志に基づいて理解されるという示唆です。【4】太極之道貴自然(たいきょくのみちは しぜんをたっとぶ)太極の道は、自然そのものを重んじることにある。無理のない、無為自然の状態が、真の道の姿だと説いています。

太極拳との関連解釈

第73首は、太極拳の「空性の理解と自然体の価値」を深く示しています。【1】無根樹,花正遠:空を悟った状態 太極拳における「無為・無念」の境地を示しています。技が身体に染みつき、遠くを見据えた心の静けさがある。【2】萬象皆空不染塵:執着を超えた動き 技は単なる動作ではなく、すべてが「空」となって染まらない。これは太極拳で余計な力みを除く「放鬆(ほうしょう)」の境地です。【3】陰陽妙理在心意:意主導の動作 太極拳は筋肉に頼るのではなく、意で導く芸術である。陰陽の変化は心と意によってコントロールされます。【4】太極之道貴自然:無理な力を捨てた理想形 自然体で無理せず、流れに沿って動く。これこそが太極拳が求める「順勢而為」の極致であり、最も理想的な修練姿勢です。

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